OSDL ニュースレター 2003 年 5 月
目次
- OSDL が引越します
- SUPERCOMM 2003 における OSDL
- キャリアグレード Linux ワーキンググループからのお知らせ
- Linux 安定化プロジェクトの最新情報
- Linux 2.5.65/2.5.66 の kmsgdump(バージョン 0.4.5)
- Rackview
- Witham の言葉 - カーネル 2.5
1. OSDL が引越します
2003 年 5 月 19 日の週、米国 OSDL はオレゴン州ビーヴァートンの施設から新しい場所に移動します。引越しが完了するのは、5 月 27 日となります。OSDL の新しい住所、およびプロジェクトサーバの予定ダウン時間については、www.osdl.org をご覧ください。
2. SUPERCOMM 2003 における OSDL
OSDL は、SUPERCOMM2003(世界最大級の電気通信インフライベントの一つ)で、パネルディスカッションを主催します。「Running your Business on Carrier Grade Linux(キャリアグレード Linux 上でのビジネス運用)」小委員会は、キャリアグレード Linux ワーキンググループの参加企業の代表者から構成されており、OSDL ラボディレクタの Tim Witham が議長を務めます。詳細は OSDL 「Coming Events(イベント情報)」ページをご覧ください。
3. キャリアグレード Linux ワーキンググループからのお知らせ
Mika Kukkonen <>
キャリアグレード Linux ロードマップコーディネータ
皆さんがこのニュースレターをご覧になっている頃、CGL チームのメンバの大半と私は、ヘルシンキで CGL の対面会議に参加しているでしょう。バージョン 2 仕様の「フィーチャーフリーズ」が、この会議の最も重要な結論になると思います。私が興奮していることは言うまでもありません。
CGL の「クラスタリング」パブリックドラフトがまもなく発表されます。このドラフトは、OSDL の Web サイトから入手できます。このセクションは 1 か月以上遅れていたのですが、これは、それだけ問題が困難で複雑であることを意味しています。実際、私たちは、抱えている未解決の問題に基づいて今秋にもバージョン 2.1 仕様を発表し、バージョン 2.0 で解決されていない問題に対処する予定です。
Proof of Concept サブグループの新しい議長として Steven Dake 氏(MontaVista)を迎えました。バージョン 2 仕様の発表に関して Steven 氏が CGL-WG に有益なアドバイスを多数もたらしてくれるものと期待しています。Steven 氏を迎えたことは大変喜ばしいことであり、この難しい仕事を完遂してくださることを願っています。その他、CGL ワークグループの全体的なロードマップの作成もヘルシンキの対面会議で行われる予定です。検討中の新しいアイデアがいくつかあるのですが、これらのディスカッションの結果については、来月一部ご紹介できればと思っています。
ところで、CGL に関して何かご質問がありましたら、私()、または cgl_discussion メーリングリストにお問い合わせください。必ずお返事するつもりです。それでは。
--MiKu
4. Linux 安定化プロジェクトの最新情報
Craig Thomas <>
テストエンジニアリングマネージャ
OSDL は 2 月、Linux 安定化プロジェクトを発表しました。このプロジェクトは、カーネル 2.5 (開発)から 2.6 (安定)バージョンへの移行を支援するために発足されたものです。カーネルが 2.6 リリースに近づくにつれ、カーネルの安定性はさらに高まっています。堅牢なカーネルを提供し、既知の不具合を修正するためには、まだ多くの作業を必要としますが、作業自体は順調に進んでいます。プロジェクトの最新情報をお伝えするには、あと少し時間がかかりそうです。
安定性に関する情報については、次のサイトをご覧ください。
http://www.osdl.org/projects/linstab
このページには、最新カーネルを用いて Scalable Test Platform で実行したテストの結果が示されています。新しいカーネルがリリースされてから数時間以内にテストを自動的に実行するよう、フレームワークがセットアップされています。 IBM 社の Linux Technology Center の結果も、このページからアクセスできます。
公表されているテスト結果には、次のものが含まれます。
- 妥当性テストと汎用テストの結果。LTP テストスイートの LSB テスト、contest、aim9、および lmbench3 の結果が含まれます。
- Linux カーネルに対するさまざまな側面からの安定化テスト、および全体的なシステムテストが実行されています。これには、dbt1-1tier、dbt2-1tier、dbt3、DOTS などのデータベーステスト、fs_inode、fs_maim などのシステムテスト、および bash-memory、memtest、vm_regress などのメモリテストが含まれます。
- パフォーマンステストの結果。bonnie++、dbench、iozone、tiobench などの I/O パフォーマンス、および ISIC、NetPerf、NetPipe、VolanoMark などのネットワークパフォーマンスの結果が含まれます。
- IA32 アーキテクチャに対するコンパイルテストの結果が、このページからリンクされています。Linux for Sparc32 の構築に関する情報もここで参照できます。
- 1〜4 日間に渡って実行したストレステストの結果。このテストは、大きなストレス負荷の下でカーネルの動作継続能力を判別するために使用されました。Cerberus、PostMark、および Stress などのテストを行ないました。
これらのテストは、それぞれ IA32 プロセッサを 1〜8 個搭載した複数のシステムで実行されています。また、2 way、4 way、および 8 way の PPC システムがカーネル 2.5 に対して実行されています。
「Kernel Status Links」セクションには、オープンなタスク(未完了で、完了に手を貸していただけるボランティアを必要としているタスク)についての情報が多数記載されています。カーネル 2.5 を安定化し、カーネル 2.6 への移行を支援する作業に参加してくださる方を募集します。各種のハードウェア上でカーネル 2.5 をテストしたり、そのパフォーマンス統計を提供したりすることに関心をお持ちの方は、Linux 安定化のメーリングリストに参加して、その結果を投稿してください。
このメーリングリストは、次の場所にあります。
http://www.osdl.org/mailman/listinfo/linstab
5. Linux 2.5.65/2.5.66 の kmsgdump (バージョン 0.4.5)
Randy Dunlap <>
技術スタッフ
KMSGDUMP とは?
KMSGDUMP は、Linux カーネルの拡張機能です(x86 システム用)。KMSGDUMP を使用すると、システム BIOS に認識されているパラレルプリンタやフロッピーディスケットに対して、最新のカーネルメッセージをコンソールからダンプできます。そのため、システムがスタックしたときに、メッセージを紙に書き写す必要がなくなります。
デフォルトでは、3.5 インチの 1.44 MB ディスケットだけがサポートされています。「kmsgdump.h」ファイルのジオメトリを変更すれば、その他の容量のディスケットも使用できるはずです。
kmsgdump によってカーネルメッセージがパラレルプリンタまたはフロッピードライブ(A: または B:)にダンプされます。フロッピーメディアは、FAT ファイルシステムとしてフォーマットすることもできますし、ロウデバイスとして使用することもできます。フロッピーメディアが FAT ファイルシステムの場合は、ファイル MESSAGES.TXT にカーネルメッセージが保存されます。kmsgdump のドキュメンテーションには、フロッピーメディアからメッセージを回復する方法が記載されています。
kmsgdump の動作
kmsgdump は、次の 2 つの方法で起動できます。
- 手動の場合 : SysRQ+D を押します(RightAlt と PrintScrn と D を一緒に押します)。
この対話モードでは、kmsgdump の各種のモードとオプションを変更できます。
- 自動の場合 : カーネルパニックが発生すると、ダンプが自動的に生成されます。
まとめ
x86 システム上でパニックが発生した場合は、kmsgdump でカーネルログメッセージをフロッピーディスクに保存することにより、時間と労力を節約できます。保存したカーネルログメッセージを該当する Linux メーリングリストに電子メールで送信したり、またはご使用の Linux ベンダにそのメッセージを送信してサポートを受けることができます。
注意
- このバージョンの kmsgdump では、60 KB を超えるカーネルログバッファはサポートされません(x86 リアルモードのセグメントアドレッシングによる)。ただし、現在のカーネルログバッファは必ず 2 の累乗(16、32、64 KB)となるので、現時点でサポートされる最大のログバッファは 32 KB となります。
- kmsgdump テキストモードインターフェースは、USB キーボードでは機能しません。このインターフェースを使用するために、テストシステムには PS/2 キーボードを追加する必要がありました。
関連リンク
kmsgdump ホーム : http://w.ods.org/tools/kmsgdump/(Willy Tarreau)
私の kmsgdump パッチ : http://www.xenotime.net/linux/kmsgdump/
kmsgdump は Linux 2.4 にも適用可能です。Linux 2.4 パッチについては、kmsgdump ホームページをご覧ください。
6. Rackview
Bryce Harrington <>
シニアパフォーマンスエンジニア
OSDL の新しい施設への引越計画を立てていた時、データセンタ内の装置編成をビジュアルに表示し、装置の実際の動作状況をより直感的に理解できるような優れたツールがあれば、どんなに便利だろうと思いました。こうした必要性を満たすために開発されたのが Rackview です。
Rackview は、データセンタ内のラックマウント装置(機械類)のレイアウトをビジュアルに表示するためのツールです。Rackview は Perl と MySQL で作成されており、データセンタ内のラックに関して、ハードウェアの変更を計画したり追跡することができます。Rackview は、発熱量や電力消費量をラック単位で表示することができ、構成を部分的に検査することもできます。
Rackview は、その他の機能を組み込んで拡張することができます。たとえば、OSDL の実装を組み込めば、特定のサーバを使用するプロジェクトの情報を提供したり、Scalable Test Platform サーバでは現在の結果リストを提供することができます。スクリーンショット、ソースコード、サンプルのコマンドラインスクリプト、サンプルの CGI スクリプト、およびメーリングリストなどの情報については、次のサイトをご覧ください。
http://rackview.sourceforge.net/
リリースの発表は、Freshmeat で行なわれます。
http://freshmeat.net/projects/rackview/
OSDL での Rackview の実装については、次のサイトをご覧ください。
http://www.osdl.org/lab_equipment/
7. Witham の言葉 - カーネル 2.5
Timothy Witham <>
ラボディレクタ
これを書いている今にいたるまで、私たちは、カーネル 2.5 を使用した実稼動システムを長期に渡って実行し続けています。実際私たちは、1 つのシステムを 40 日以上 にわたりこの開発カーネルで稼動しています。ばかげていると思われるかもしれません。しかし、現在の開発段階における開発カーネル 2.5 のほうがカーネル 2.4 の初期のリリースよりも安定している、という噂もあります。それを確かめる方法はテストしかありません。何が起こるかを確かめるためにこれらのカーネルを実際に使うことにしたのです。これらのカーネルは開発途上なので、障害が発生する可能性があります。そこで、万一に備えてバックアップ計画を作成しました。1 か月以上が経過しましたが、バックアップ計画を実施する必要は今のところありません。
これは、このカーネルを実働に投入する準備が整ったことを意味するのでしょうか?そうではありません。しかし、2.5 から 2.6 ツリーへの移行をカーネル開発者に決断させるようなデータポイントが他にもあります。
私たちは、5 月の最後の週に OSDL Beaverton から引越します。そのため、システムを移動する際にそれらの電源を落とす必要があります。それまでの間、2.5 を配置したシステムをリブートすることがないようにと願っています。
Tim
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