OSDL ニュースレター - 2003 年 2 月 |
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目次:
- OSDL、Linux 安定化プロジェクトを開始
- OSDL Database Test 2 が STP で利用可能に
- OSDL-DBT-3 リリース
- STP と PLM のハイレベルレポート
- キャリアグレード Linux ワーキングクループからのお知らせ
- データセンタ Linux のアップデート
- Witham の言葉
1. OSDL、Linux 安定化プロジェクトを開始
Craig Thomas()
テストエンジニアリングマネージャ
OSDL は、カーネル 2.5(開発)から 2.6(安定)バージョンへの移行を促進する、Linux コミュニティとのプロジェクトを開始しました。この Linux 安定化プロジェクトは、Linux 開発者コミュニティに対し、各リビジョンのカーネルについて速やかなフィードバックを提供し、パフォーマンスの問題と欠陥の可能性を特定します。このプロジェクトでは、各種テストの実行やテスト結果の公表などが行われます。
このプロジェクトは、オープンソースコミュニティにおける共同の取り組みです。
現在このプロジェクトで予定されているテスト作業は、Linux カーネルの次の機能を対象にしています。
- サーバ(ウェブ、メール、LDAP)
- エンタープライズクラスのデータベースの使用
- データセンタ Linux 機能セット
- キャリアグレード Linux 機能セット
- デスクトップシステム
幅広いカーネルの機能に対応するため、新規のカーネルリビジョンごとに、当ラボのさまざまなハードウェア構成でテストを行う予定です。次のテストを予定しています。
- 正当性テスト(機能、適合性など)
- 安定性テスト(データベースシミュレーション、ファイルシステムロード、メモリなど)
- パフォーマンステスト(ネットワーク、スケーラビリティ、I/O など)
- コンパイルテスト(各種アーキテクチャでのコンパイル)
- バイナリ互換性テスト
OSDL は、カーネルの現在の状態に関する追加情報として、これらのテスト結果も提供する予定です。
テスト結果のサイトは随時更新されます。
このプロジェクトの結果は、次のサイトで公開されています。 http://www.osdl.org/projects/26lnxstblztn/results/
皆様がご自身で行った安定化作業の結果を是非 OSDL まで送信してください。次のサイトから、Linux 安定化メーリングリストに是非参加してください。 http://www.osdl.org/mailman/listinfo/linstab
2. OSDL Database Test 2 が STP で利用可能に
Mark Wong()
技術スタッフ
オンライントランザクション処理(OLTP)のワークロードである OSDL Database Test 2(OSDL-DBT-2)が Scalable Test Platform(STP)に追加されました。これは実世界のデータベースワークロードシリーズの第 2 弾であり、カーネル開発者は自ら開発した Linux オペレーティングシステムへのパッチをテストできます。STP で「dbt2-1tier」テストをリクエストしてカスタムカーネルを評価してみてください。
OSDL-DBT-2 は、多数の倉庫とそれぞれの管轄の営業地域を運営している部品卸売り業者のワークロードをシミュレートします。OSDL-DBT-2 についての詳細は、次のサイトをご覧ください。 http://www.osdl.org/projects/performance/dbt2-page.html
Linux 2.4 および 2.5 の整合性の結果は、次のプロジェクト結果のサイトに掲載されています。 http://www.osdl.org/projects/dbt2dev/results/
現在、OSDL-DBT-2 は SAP DB データベース上で稼動していますが、テストキットを別のデータベースに移植するお手伝いをしていただけるボランティアを募集しています。この取り組みに興味がある方は、是非ご連絡ください。
3. OSDL-DBT-3 リリース
Jenny Zhang()
技術スタッフ
OSDL は、実世界のデータベースワークロードシリーズにおける 3 番目のテストキットをリリースしました。OSDL-DBT-3 は、アドホックなクエリに対する意思決定支援の実世界におけるシナリオをシミュレートします。開発者はこのテストキットを使用することで、オペレーティングシステムでのデータベースのパフォーマンスに対する Linux カーネルの新しいパッチの影響を調べることができます。
DBT-3 は TPC-H から派生したものですが、柔軟性が向上しています。たとえば、DBT-3 では、テスタは TPC-H のすべてのワークロードを実行するだけでなく、テストやクエリを個別に実行することもできます。テスタはユーザ定義のクエリを実行することもできます。
DBT-3 ではテストで使用するデータベースのサイズを選択するオプションを提供しています。
ローデータのサイズは「スケールファクター」によって定義されます。たとえば、スケールファクター 1 は、ローデータのサイズが約 1 ギガバイトのデータベースを指します。実際のデータベースのサイズは、データベース管理システムおよび補助データ構造によって異なります。
OSDL では現在、スケールファクターが 1 のデータベースに対して DBT-3 ワークロードを実行しており、スケールファクターを段階的に 10 まで増やしていく予定です。
DBT-3 についての情報は、次のサイトに掲載されています。 http://www.osdl.org/projects/performance/dbt3-page.html
DBT-3 は SourceForge プロジェクトのサイトからダウンロードしていただけます。 http://sourceforge.net/projects/osdldbt
テストをインストールして実行したら、結果を是非お知らせください。次のサイトから結果を「OSDL Performance」メーリングリストに投稿していただけます。 http://lists.osdl.org/mailman/listinfo/osdl_performance
4. STP と PLM のハイレベルレポート
Bryce Harrington()
シニアパフォーマンスエンジニア
ここ数か月の間に、STP と PLM は豊富なデータを蓄積してきました。PLM にアップロードされたパッチはすべて、数種類の方法で自動的にコンパイルテストされます。もちろん、STP は STP ユーザベースおよび自動化された「kautotest」システムの両方から要求された各種テストを引き続き実行しています。これだけのデータがあるのはいいが、どうやってすべてを把握するのですかと指摘されることがよくあります。すべての結果のハイレベルな概要をつかむのは困難な作業です。
そこで、各種のカーネルパッチ用に、PLM と STP の両方の結果をまとめ、26 種類のテストと 4 つの PLM フィルタについての合否(合格は緑、不合格は赤)を示すハイレベルなレポートツールを作成しました。
レポートは次のサイトに用意されています。 http://www.osdl.org/stp_plm_report/
このツールは、2.4 と 2.5 の両方のカーネル向けの 7 種類のパッチシリーズ、およびそれぞれのカーネル用のいくつかの主要なパッチセットを表示するよう設定されています。設定を変更し、OSDL の外部で STP 2.x を実行する人が、独自のテストシリーズに合わせて表示データをカスタマイズすることも可能です。このツールの使用法とカスタマイズについての詳細は、このツールのメインページからアクセスできます。STP 2.01 リリースでの stp_plm_report にご期待ください。
5. キャリアグレード Linux ワーキングクループからのお知らせ
Mika Kukkonen()
キャリアグレード Linux ロードマップコーディネータ
ニューヨークでの LinuxWorld Expo 中に開催されたミーティングは無事終了し、バージョン 2 の仕様に向けた明確なロードマップを策定することができました。2003 年 6 月末までに、バージョン 2 の仕様を完成させ、発表することを現在の目標としています。
このような大胆な目標を掲げる理由の 1 つは、Linux カーネル 2.7 ツリーでどの機能に対応すべきかについて、良いアイデアを得たいためです。Ottawa Linux Symposium 中に開催されるミーティングでは、2.7 のツリーについてじっくり議論を行いたいと思っています。
皆様のご協力を必要としている分野の 1 つに、バージョン 2におけるセキュリティ機能があります。セキュリティは重大かつ困難な問題であり、すでにこのことに取り組んでいる方々がいるわけですから、私たちは一から開発しなおすつもりはありません。Linux カーネルのセキュリティ機能に関心をお持ちの方は、是非 cgl_discussion メーリングリストに参加してください。
コンセプト検証サブグループの最大のニュースとして、CGL ワーキンググループのメンバーである Ericsson が、オープンソースの 2 つの重要なプロジェクトとして TIPC(http://tipc.sf.net)と AEM(http://www.linux.ericsson.ca/aem)をリリースしました。この 2 つのプロジェクトは、キャリアグレード Linux の中核を担うことが期待されています。
認証に関しては、POSIX テストを中心に取り組んでいます。認証サブグループのリーダー Rusty Lynch は、「Open POSIX Test Suite」プロジェクト(http://posixtest.sf.net)に深く携わっています。
認証サブグループのもう 1 つの重要な分野が IPv6 です。IPv6 には、現在のところ Linux のための優れたテストスイートがありません。手始めとして、TAHI プロジェクト(http://www.tahi.org)によって作成されたテストの利用を計画しています。
全体として、2003 年も活発な非常に興味深い年になりそうです。CGL ワーキンググループについてのご質問や、私たちの取り組みへの参加を希望される場合は、お気軽に私()までメールをお寄せください。
6. データセンタ Linux のアップデート
Stephen Hemminger()
データセンタ Linux ロードマップコーディネータ
Linux 2.7 の要件に関して
DCL テクニカルボードは、メンバーおよびメンバー以外の皆様から、データセンタに関連する Linux 2.7 の要件についてご意見をいただきました。現在これらの意見をまとめて優先順位を付けているところですが、まだご意見を受け付けております。
機能に関するご要望があれば、DCL ロードマップコーディネータ()までお寄せください。2 月末日までに届いたものについては、次回の要件評価の対象とさせていただきます。
Linux 2.5 コンジット
DCL の特定要件の対象となるプロジェクトを格納する Linux カーネルソースツリーは OSDL によって管理されています。この開発コンジットは、CGL と DCL に共通のサブセットと、DCL 専用パッチの 2 つの部分から成ります。
最新のリリースは 2.5.59-dcl2 です。このパッチセットは 2 つの部分から成り、CGL/DCL 共通パッチセットには次のものが含まれています。
Linux トレースキット(LTT)- Karim Yaghmour
Linux カーネルクラッシュダンプ(LKCD)- Matt Robinson、LKCD チーム
Kernel Probes(kprobes)- Rusty Russell
Megaraid 2 ドライバ - Matt Domsch
DAC960 ドライバ - Dave Olien
DCL 専用パッチには次のものが含まれています。
Lost timer tick compensation - John Stultz
Improved boot time TSC sync - Jim Houston
Lockless gettimeofday - Andi Kleen、Stephen Hemminger
x86 用 Perf monitor counters - Mikael Pettersson RCU statistics - Dipankar Sarma
Scheduler tunables - Robert Love
最新リリースのパッチは次のサイトからダウンロードしていただけます。
http://sourceforge.net/projects/osdldcl
BitKeeper の公開リポジトリからも入手可能です。
共通コード: bk://bk.osdl.org/linux-2.5-osdl
共通コード + DCL: bk://bk.osdl.org/linux-2.5-dcl
7. Witham の言葉
Timothy D. Witham()
ラボディレクタ
OSDL では多くのプロジェクトが進行中ですが、なかでも 2.5/2.6 カーネル安定化に関するサマリページの最初の発表に注目が集まっています。このページに示されているデータ自体は目新しいものではなく、すでに実行されたレポートをまとめたものです。このことで私は、以前新しいテクニカル営業サポートチームに「Benchmarking 101」の教育を行っていた頃、授業の 3 分の 1 をデータのプレゼンテーション方法に費やしていたことを思い出しました。
OSDL で実行されるテストの目標は営業サポート用のベンチマークとはかなり異なりますが、結果をわかりやすくプレゼンテーションすることが重要だという点は全く同じです。これは凝ったプレゼンテーションでごまかすという意味ではありません。忙しいときに、読むのに 30 分もかかる 10,000 行のレポートがあったら、後で時間ができてから読もうということになってしまいます(そして結局読まないことが多いのです)。
結果を単純化しすぎることも避けなければなりません。テストの評価結果が 1 つしかない場合、(マネージャを除く)全員がその 1 つの数値の意味を評価して理解しなければならないため、この場合も後延ばしにされてしまいます。
単純でわかりやすく、結果が実際に意味する事柄を歪めないようにデータをプレゼンテーションするのは非常に難しい作業です。結果が公正かつ適切にプレゼンテーションされているかどうかを判断する際、私は『How to Lie with Statistics(統計で嘘をつく方法)』という、小さいがとてもためになる本から学んだことを参考にしています。この本に載っている例はいずれも、物事は見た目とは違う、という警告であり、私は他人のデータを読むときにいつもこれらを念頭に置くようにしています。そしてもちろん、この本で指摘されているような悪い方法でデータをプレゼンテーションしないように心掛けています。
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